ダライアス通勤生活   

不安障害が悪化した。昔から長距離の電車移動は得意では無かったが、4~5駅の短距離移動も苦手になってしまった。電車が止まったらどうしようという不安に襲われただけでめまいや息切れが起きる。鞄を右手に持ったり左手に持ったりという奇行を繰り返してしまう有様だ。ボボ・ブラジルのロゴ入りバッグをせわしなく持ち直している中年男の姿はさぞ滑稽であろう。まぁ最悪の場合は専用の薬を飲めば症状は治まるのでそこまで深刻ではないのだけど。
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いつまでもこんな状態なのも困るので、極力薬に頼らずに症状と戦うことにした。自分でどうすることもできない恐怖を克服する為には、愛する物から力を借りるしかない。僕にとってそれはプロレスと自慰しか無い。思い返せば3・11の東日本大震災の時も、震災後の先行き不透明な不安と目に見えない放射能の恐怖に打ち勝つ為、一人で自宅のトイレに篭り、初代タイガーマスクの覆面をかぶって自慰をすることで自分を奮い立たせたものだった。同じように不安に襲われている同棲中の彼女をほったらかし、虎になって自慰をした結果フラれた。フラれた理由は虎になって自慰をしたからだ。
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これまで東京から実家の香川に帰省する時は、新幹線での長距離移動に耐える為、常に虎の覆面を携帯していた。品川から新幹線に乗り込むと、だいたい名古屋辺りで精神に限界が訪れる。僕はおもむろに席を立ち、トイレ内で虎になり自慰をする。東から西へと移動しながら自慰をする。ヒガシカラニシヘジイヲスル。自慰の最中ふと思う。時速200キロを超える速度の中で自慰をしている今この瞬間、この新幹線に雷でも落ちたら、何かの化学反応で僕は本当の虎になってしまうんじゃないか?そんなことを思うと勇気が沸いてくるのだ。
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そんなこんなで今回も虎の力を借りることにしたのだが、通勤に使う電車にはトイレが付いていない。なので少し早めに起きて自慰をすることにしたのだが、自慰をする為に早起きをするのは終わりの始まりのような気がしたのでやめた。それならば最寄り駅のトイレで虎になろうとしたが、最寄り駅には個室トイレが一つしかない為、先客が居た場合は虎になれずに乗車しないといけない。それを避けるためにはやはり少し早起きして駅に行かないといけない。だからどうして自慰の為に早起きしないといけないのだ。さすがに産んでくれた親にちょっとだけ悪い。


そこで考えたのが、自分が乗った電車内で自分好みの女性を見つけることだった。電車に何かあった時に、この娘にだけは情けない姿を見せたくないし、君だけは守ってみせるぞと思えるだけの女性と一緒の車両なら恐怖に打ち勝てる。しかし、そう簡単に毎日素敵な女性とめぐりあうわけもない。そういう時は自分の頭の中で、ババアを若返らせたり、幼児を大人に成長させ何とか自分のマドンナを見つけるようにした。恐怖が薄らぐと余裕が出てくるもので、停車駅から乗り込んでくる女性達を厳しく審査するようになり、目的地に着くまでにベストオブマドンナを決めるようになった。ただ審査をするのにも飽きてきた僕は、押しボタンをポケットの中に忍ばせ、駄目な女性が乗ってきた瞬間にボタンを押しその女性を爆破する妄想をして楽しむようになった。そのうちどんな女性が乗ってきても爆破するだけのただの爆破魔に成り下がった。



やはり女性を爆破するのにもそのうち飽きてきて、男女問わず電車に乗ってくる人をシューティングゲームの敵だとみなし、雑魚キャラ、中ボス、大ボスに分類して撃墜するようになった。雑魚は1回、中ボスは20回、大ボスは50回ボタンを押さないと撃墜できないという設定で駅と駅の間をゲーム感覚で楽しんだ。注意深く他人を観察し始めて気づいたことだが、いかにも雑魚キャラというミジンコのような人も居れば、ダライアスの中ボスのような魚人間も居るし、風神、雷神のような大ボスの風格を漂わせた人も居る。みんながそれぞれの人生を抱えてこの電車に乗っているんだ。みんなみんな生きているんだなと思うと胸が熱くなった。胸は熱くなったが全員逃さず撃墜した。
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このように色々と試行錯誤をした末に僕がたどり着いた結論は、ちゃんと薬を飲んでから乗るか、黒人と一緒の車両に乗るかの二択だ。デカい黒人が近くに居てくれるだけで、どんなトラブルが起きても大丈夫だろうと思える。とにかく安心感が半端ではない。僕は電車に乗る度、黒人を捜し求め先頭車両からケツの車両まで歩く。黒人を見つけられない時は大人しく薬を飲むだけだ。他人から見れば辛い人生に思えるかもしれないが「今日は黒人居るかな…?黒人居てくれよ!」と思いながら駅に向かう足取りは軽いし、黒人を見つけられなかったら薬を飲むという面白い条件付きで薬を飲むのは普通に薬を飲むより楽しい。僕は幸せだ。
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# by tsume_kirio | 2015-01-10 15:26 | 人生の終わり | Comments(7)

農協の分際でテニスをするな   

歓楽街で働いていた時のこと、場所柄、酔っ払いにヤク中という迷惑客とのトラブルが多々起きるのだが、何より多いのが業務両替でのトラブルである。業務両替というのは、飲食店等の店員が自分の店の釣銭を作る目的で、ゲームセンター等に置いてある両替機でお金を崩し、お金を使わずに立ち去るという迷惑行為である。なぜ迷惑なのかは詳しく説明はしないが、やられた方としては、とっ捕まえて一方的に説教できるぐらいの立派な犯罪行為なのである。


うちの店も頻繁に業務両替をされていたのだが、そのほとんどが近隣のホストクラブである。下っ端のホストが店の釣銭を確保する為にやってくる。私の対処法としては、その場で捕まえて軽く説教した後に、名前、住所、勤務先、代表者の名前等を書類に書かせ、今後二度とうちの店でこのような行為は致しませんと誓わせて釈放という流れになっている。最初から素直に自分の非を認める者は少なく、激しい口論になることもしばしばだ。大声でホストと喧嘩しながら「俺は…今…歌舞伎町で…生きているんだ!」という田舎者に特有の興奮を最初のうちこそ感じていたのだが、あまりにも日常的になり過ぎてしまい、すぐに飽きてしまった。なのでそのうち、無駄な口論をせずにホストをおちょくることで暇をつぶしていた。


「じゃあこの書類を書いて」と書類を渡し、ホストが書類を書こうと視線を下に落とした瞬間に「こっちを見ろ!」と大声で威嚇するのが私の十八番だった。どうしたらいいか分からずに動揺するホストの姿を見るのがたまらなく好きだった。調子に乗り過ぎた時は、十回ぐらい同じことをやっていたら「書類を書いたらいいのか、お前の話を聞いたらいいのか、どっちなんだよ!」と言ってホストがボロボロと泣き出したので「この書類を書いたらこの街を出て行きなさい。君はこの街に居てはいけない人だ」と酒場のマスターのような優しい言葉を送った。彼の涙はそこそこ美しかった。鼻水をすすりながら書類を書いているホストに「出身地はどこなの?」と気持ちを落ち着けさせる為の世間話を振ったら、ふざけたのか本当なのか分からないが「奄美大島出身です」と答えてきたのにカチンと来たので「こんなことして…ふるさとの島が泣いてるよ?海が泣いてるよ?奄美のクジラとイルカが泣いてるよ?」と執拗に問い詰めたら、追い詰められて精神が崩壊しかけたホストが「海が泣いてる…?」と小声でつぶやいたので笑いを堪えるのが大変だった。
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海といえば、うちの婆ちゃんはサザンオールスターズの桑田佳祐のことが嫌いだ。その理由は、婆ちゃんが若い時に、桑田佳祐にそっくりな暴漢にレイプされかかった過去があるからなのだが、その話を聞いていた爺ちゃんが「そういえば太平洋戦争でうちの部隊を見捨てて逃げ出した兵士の顔も桑田佳祐に顔がそっくりだった」と言っていた。夫婦が同じ人を憎むことはとても素敵なことだなと思ったが、さすがに桑田佳祐に同情した。桑田が泣いている。
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こんな風にふざけた対応を日々続けていると、激高するホストもたまに現れる。この前は「外でお前を見かけたらぶっ飛ばしてやんよ!店の全員で復讐してやるからな!」と凄まれたので「復讐の為に生きるのはとてもとても悲しいことだ」とアメリカインディアンの教えにありそうな素敵な言葉を送った。
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行きつけのオカマバーのオカマと、復讐についての話をした時に「復讐は一気に終わらせちゃダメ。たとえば同僚に復讐をするなら、責任を取らせて会社を辞めさせるような簡単な復讐じゃなくて、周りのみんなに馬鹿にされながらも、会社を辞めることができずに、ずっとずっと会社に居ないといけないような辛い状況にするのが本当の復讐よ」と言うのをじっと聞いてたら「私のこと魔女か鬼だと思ってるでしょ?私はただのオカマ」と言った。インディアンの教えよりもオカマの教えの方が実践的である。


今までの人生で、誰かに復讐をしたことがあるか思い返してみると、復讐をされたことは多々あるが、自分が誰かに復讐をしたのは中学校の時に行われた農協への復讐だけだった。
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きっかけは日曜日の昼下がり、近所の公園のテニスコートでテニスを楽しもうとした僕と友達に向かって、一人のおじさんが颯爽と歩いて来てこう言った。「ここのテニスコートは今から農協のおじさん達が使うので、君達は出て行きなさい」、そう言われてもこちらの方が先にコートに到着していたし、このテニスコートは予約制ではないという僕達の正当な主張は農協により踏み潰され、最終的に「生意気な子供だ!」とビンタをされてしまった。その日、僕達は農協への復讐を心に誓った。


しかし、復讐といっても金も権力も無い中学生にできることは限られていた。とりあえず町中に農協の悪い噂を広めようと思ったのだが、どういう噂が農協にとっての悪い噂なのかが全く分からなかったので断念した。次は頭の悪そうな人に「農協がお前の悪口を言っていた」と告げ口をして、自分達の代わりに農協を攻撃してもらおうと思い立ち、それなら大工が一番頭が悪そうだからいいんじゃないかという友達との共通偏見により、近所の材木所の大工に「農協の人がこの世に大工は必要無いと言ってたよ」と告げ口をした。悪口の度合いを間違えた結果、ヒクソン・グレイシー似の大工に殴られた。
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次は、農業に携わっている農家は農協の仲間であり僕達の敵だということにして、田植えをしている農家に八つ当たりをした。田んぼに忍び込み、田んぼの中を泳いでいるカブトエビを一箇所に集め、魚群のようなカブトエビの巨大な群れを作り農家を驚かせたり、農家のお婆さんがしゃがみ込んでケツを突き出して田植えをしてる後ろに回り込み、腰を思いっきり打ち付けて「どうや!どうや!」と言って回った。「お前は農協のせいでレイプされたんやぞ!」という素敵な捨て台詞を吐いていた友達は、今は実家の不動産屋を継いで社長になっている。
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こんなことをしても農協には何のダメージも与えれていないことに気づいた僕達は、もっとシンプルな方法で農協に復讐をすることにした。それは農協の入口の門を勝手に閉めるという単純な迷惑行為だった。農協の職員が目を離した隙に猛スピードで鉄製のスライド式の門扉を閉めて逃げることを繰り返して精神的苦痛を与えるのだ。ピンポンダッシュは逃げるスピードが大切だが、この門閉めダッシュは一気に扉を閉めるパワーと逃げるスピードの両方が要求される高度な悪戯なので、構造が似ている学校の校門で何回も何回も練習をした。農協の門を勝手に閉めてはいけないのだから、学校の校門も勝手に閉めてはいけない。先生に見つかった僕達はこっぴどく殴られた。
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短期間のうちに、学校の先生と農協職員と大工という異なる3つの職種の人に殴られた僕達は、復讐がいかに損しか産まない愚かな行為なのかを思い知った。今となっては、それを知るきっかけをくれた農協には感謝しかないが、農協の女性職員は全員ヤリマンだと思っている。



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# by tsume_kirio | 2014-10-20 07:42 | 復讐 | Comments(9)

アルバチャコフと呼びたかった   

以前働いていた職場で女性バイトがバックレた時のお話。

彼女は一流声優を目指し奈良県から上京した19歳の女の子。新宿の声優養成所に通いながら、空いた時間は全てアルバイトに充てているという頑張り屋さん。正直顔立ちはそんなに良くないが、夢に向かって頑張るその姿勢を気に入った僕は優しく仕事を教えていた。そのせいか彼女も僕に心を開いてくれ、仕事の合間の雑談も弾むようになった。そんなある日「声優業界を生き抜いていく上での大事なことは何か?」という話になった。彼女は「やっぱり色仕掛けだと思います。私も養成所つながりで声優業界の偉い人と食事に行く機会があるんですが、その時はパンツが見えるか見えないかぐらいのホットパンツを履いて行きます。そして必ず偉い人の隣にピッタリと寄り添います。手が私の太ももに届く距離で」と答えた。
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自分の夢の実現の為には色仕掛けもいとわないようなハートの強い女性は大好きなのだが、それならそれで、もっと綺麗になる努力をしたらどうなんだい。元プロボクシング世界チャンピオンの勇利アルバチャコフみたいな顔の女の太ももは誰も触りたくないと思うんだけどな。君はフロアを巡回する時に、無駄にケツを左右に振りながら、鳥が羽ばたくように両手をパタパタさせて歩いているんだけど、もしかして君は自分をペガサスか何かだとでも思っているのかな?仮に君がもしペガサスだとしたら、オスでもメスでもなくてブスのペガサスだからね。だから空を飛べないんだと思うよ。あえて言うけど、僕は君より可愛い犬をたくさんたくさん知っているんだ。たとえば映画の「101匹わんちゃん」に出てくる101匹の犬は全部君より明らかに可愛いよね。君102位だよね。どうしてだろうね?俺に教えてくれよ。勇利アルバチャコフよ。と心の中で叫んだ。
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中学の時の理科の授業で「月にはクレーターと呼ばれる地形が有り、その形が似ていることからニキビ痕のこともクレーターと呼ぶ」ということを学んだ後、クラスのヤンキーがニキビ痕がひどかった僕を床に寝させ、僕の顔に両足を乗せて「月面着陸!」と言った。当時は辛かったが、今にして思えばセンスのあるいじめだなと少し感心してしまう。オール巨人ぐらいのセンスはあるだろう。

高校の時の生物の授業で「人間の顔には無数のカオダニが居る」ということを学んだ後、クラスでもかなり可愛い才女に呼び出され「あなたがブサイクなのはきっとカオダニがいっぱい居るからだよ。私が退治してあげるね」と顔を何回もビンタされた。当時は辛かったが、今にして思えば生涯で一番興奮するシュチエーションだった。あの興奮をもう一度と思い、SM風俗の女王様に事細かに説明をしてその再現を願ったのだが「辛かったのね・・・」と女王様に抱き締められた。それが一番辛かった。

高校生の時はニキビが幾分マシにはなっていたが、鼻の周りだけは赤いままだった。顔の中心部分にある鼻は真っ赤なのに、その周りは色白の肌だったので、色の配置が日本の国旗に似ているということで「ジャパン」というハイセンスなあだ名をクラスの女子から付けられていた。いじめられながら国を背負うことになった。僕より嘘つきの友達が「深くゆっくり深呼吸をすると鼻の赤いのが消えていくよ」と教えてくれたので、毎日試していたら「ふ~ふ~ふ~」という僕の呼吸音を聞いていた女子から「サイボーグジャパン」と呼ばれるようになった。いじめられながらにして機械の体を手に入れた。
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こうやって思い返してみると、理科の授業の後にこれだけいじめられていたのは日本でも僕だけでは無いだろうか。今日から理科を恨もう。

いじめられても僕はずっと満面の笑みで笑うようにしてきた。それがブサイクなりの戦い方だった。毎日無理にでも笑っていたら自然といじめは少なくなっていった。そうやっていつも笑っていたら「君のしわだらけになった笑顔って、カナブンとかの虫の裏側に似てるね」と言われた。千里の道も一歩から。
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三十歳を過ぎて、ようやく自然に笑うことができるようになった気がする。男の俺はこういう戦い方しかできなかったけど、女性は違う。女性は化粧とか自分の努力でどれだけでも綺麗になれる、そういう戦い方は絶対にしないといけないのだ。どうせ体を売るのならもう少し綺麗になってからの方が効果的なのだから。ボランティア活動と一緒で枕営業も効率重視でやるべきだということを彼女に教えないといけない。その第一歩として次にシフトがかぶった時は彼女のことをアルバチャコフと呼ぼうと決めていたのに、彼女は飛んでしまった。ブスは空を飛べないが仕事は飛べる。


近々、宗教をしている可愛い女性を紹介してもらうことになっている。僕が過去に付き合った女性は「敷居を踏んではいけない」「朝は必ず5時に起きて祈ること」という2つが主な教えであるサブカル宗教をしていたのだが、今度の女性は日本でも最大手の宗教をしているらしい。楽しみだ。中小企業のような宗教ともう一度向き合うよりも、大企業とやり合う方が何倍も面白い。就活生に負けないぐらいに僕は燃えている。僕はまだ飛べる。


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# by tsume_kirio | 2014-09-26 06:45 | 人生の終わり | Comments(4)

バイからの手紙   

以前働いていた職場にて、僕が面接をして採用した女性アルバイト二人が、二人ともバイセクシャルだった。二人とも仕事も出来て愛嬌のある良いバイだ。バイに良いも悪いもないかもしれないが。最初に採用したバイは面接をしている時点で「こいつはバイだ」と気づいたので「僕はバイセクシャルやレズで仕事のできない人を見たことが無い。少なくとも僕の周りにはいない。話してみて君も必ず仕事ができる人だと確信した。必ず採用するからね」と差別と偏見と高評価が入り混じった約束をした。微妙な笑顔で部屋を出ていくバイを見送った後「高校で生徒会長をしていたそうだが、その時点でバイだったとしたらバイセクシャル会長だったんだな…バイ会長。バイ会長の下で書記をしたかったなぁ…。夕陽が差し込む生徒会室で「私はこの学校が本当に好きなんだよ」って言われたら、号泣しながらバイ会長を抱き締めるだろうな…」とか「ずっと剣道をしていたのか…「面!面!バイ!」とか「バイ!バイ!胴!」とかふざけて叫んだりしなかったのかな…どこにぶつけていいか分からない自分の感情を叫びたくなった時もあるだろうに…僕がバイなら絶対叫ぶけどな…どうなんだろうな…」といろいろ妄想をした。数週間後の面接で事務所に入って来た第二のバイを見た時には「どうしてここにはバイしか面接に来ないんだ!」と思いながら面接をした。もちろんバイなので採用した。
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ある時、最初に雇ったバイ1号が自分の夢のためにバイトを辞めることになった。バイ1号とバイ2号を遠目に見ながら「行くバイもあれば残るバイもあり」と声に出してつぶやいた。勤務最終日にバイ1号から「自分の性癖を隠さずに働けた職場は初めてだったので気楽でした。嬉しかったです。今までお世話になりました」と書かれた手紙をもらった。「バイからの手紙」。あまり手紙をもらうことのない人生を歩んできた自分にとってとても嬉しい手紙だった。ちゃんとお礼を言うのが恥ずかしかったので「最後までしっかりしてる所がバイらしくて良いね」と言った。苦笑するバイに「君は君らしく、バイはバイらしく生きてください」と最後の言葉を送った。「映画の『ショーシャンクの空』みたいにあそこの壁に「バイ、ここにあり」って彫ってくれないかな?もう一人のバイの子が辞める時にその下に「もう一人のバイもここにあり」って彫ってもらうから」という最後のお願いは拒否されてしまったのでそれだけが心残りだ。
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手紙をもらうことも少なければ、手紙を送ることも少ない人生だった。唯一積極的に他人に手紙を送っていたのは、小学生の時の進研ゼミの赤ペン先生とのやり取りだったように思う。進研ゼミには毎号提出用課題があり、そこに赤ペン先生へ自由にメッセージを書ける通信欄がある。添削を担当してくれた赤ペン先生が返事も添えて返却してくれるという一種の交換日記のような場所となっていた。友達からそのことを聞いた僕はすぐにでもやりたかったが、うちの家は貧乏だったので進研ゼミを取るお金が無かった。なので進研ゼミをやっている友達に頼み込み通信欄だけ書かせてもらうというゴーストライター的なことをやっていた。最初の頃は「下着の色を教えろ」というような低俗なことを書いて送っていたのだが、そのような場合はそのことには一切触れず課題の出来にしかコメントしてくれないことに気づき、今度は返事をせずにはいられないことを書こうと思い「隣に住んでいる家族が変な宗教をしています。そいつらが裏庭で育ててる柿の木の枝が、うちの庭まで伸びてきて、その枝から落ちた柿を拾っただけで泥棒扱いされました。どうしたらいいですか?」という深刻な相談を書いて送ったら「先生にはどちらが悪いかは分からないけど、相手が怒っているのなら一応謝った方がいいかもね」という悲しい返事をもらった。そのことで多少壊れてしまった僕は通信欄に枠の大きさぴったりの味付け海苔を貼って送るようになった。春も夏も秋も冬も味付け海苔だけを貼って送り続けた。先生は課題の出来以外のことは何も言ってくれなかった。友達が進研ゼミを辞めることになり、最後の通信欄にもいつものように味付け海苔を貼った。いつもと違ったのは味付け海苔の裏に「今までありがとうございました。本当にごめんなさい」と書いたことだ。これが僕と赤ペン先生の全て。
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年を重ね、味付け海苔で作った年賀状を送るために郵便局と喧嘩をし、配送不可能と言われたことに腹を立て、元旦の朝に自分で年賀状を届ける大人に僕はなった。全て赤ペン先生のせいだ。
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# by tsume_kirio | 2014-08-03 15:18 | 手紙 | Comments(6)

痩せる決意をするまでの話   

最近仲良くしている女子大生が居る。僕と彼女の距離が縮まったきっかけはあまり美味しくないうどん屋での会話だったと勝手に推測している。カウンター席に横並びで座った時、自分の目の前にあるぶっかけうどんに一度目を落としてから「彼氏とどんなHしてるの?」と聞いた。彼女は一瞬言葉に詰まったが、一呼吸置いてから彼氏との性生活を詳細に答えてくれた。なんてグッドコミュニケーション。ひとつ間違えればセクハラというかセクハラそのものなんだけど、それをきっかけに彼女とは一緒に映画を見に行く仲になった。東京駅が100周年ぐらいなのを記念して作った「すべては君に逢えたから」を観賞。まず自分では足を運ばないであろう種類の映画だったのも新鮮だったし、エンディングでゆずの歌が大音量で流れるのを聴きながら「これが映画だ」と心から思った。映画のエンディング曲は全てゆずにすればいい。余計なかっこ良さを考えて的外れのエンディング曲を流してしまうよりもずっと良いだろう。一番の収穫は生まれて初めて玉木宏の演技を見て「すごく良い声してるな」と知ったことだ。うどん屋でのセクハラからはじまった縁が「玉木宏は実は良い声をしている」という発見まで繋がる。なんて素晴らしい世界だろう。毎日仕事終わりに「ホーボー・ウィズ・ショットガン」のDVDを観てから寝ていた自分にサヨナラだ。
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上のうどん屋での一件のように、僕はセクハラは素面でするようにしている。女性を嫌な気持ちにするかもしれない危険な言葉を使う時は、せめて何も言い訳にできない状態で相手に伝えるのが僕なりの武士道だと勝手に思っている。本当の武士ならまず女性を大切にするのだろうけども。まぁとにかく本当にお酒を愛しているのならお酒を何かをする時の力にしたり、失敗した時の言い訳にはしない方が良い。僕はシーチキンを心から愛しているので「昨日はシーチキンを食べた勢いで失礼なことを言ってすいませんでした」なんて言葉は一生言いたくない。シーチキンには何の罪は無くただ美味しいだけ、悪いのは僕自身なのだから。シーチキンとドデカミンとは良い距離感でこれからも付き合っていく。偉そうに書いているが、僕の女性とのコミュニケーションは「相手の気持ちを全く考えない」という一点だけで成り立っており、相手が受け止めてくれるかどうかという単純明快なものである。前述の女子大生をはじめ、よく一緒に飯を食う奥田民生似の女友達、こんな僕と仲良くしてくれている女性達には感謝の言葉しかないが、女子大生は車に二回跳ねられた上に心理テストでサイコパスの診断を受けているし、民生似の女は前科持ちの介護士なのでどっちもどっちだ。
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お酒と言えば、僕はお酒を飲み過ぎてトラブルを起こすことは少ない方だ。飲酒運転で弘法大師空海が作ったほこらをぶっ壊した祖父や、飲酒運転で当て逃げ事故を起こしてパクられた親父に囲まれて育ったので、自然と「酒」という物への自制心が育まれたのだと思う。唯一酒で失敗したと記憶しているのは大学時代のことだ。うちの大学では毎年六月ぐらいに、グラウンドの真ん中にキャンプファイヤーのように火を燃やし、その周りで学年、教授関係なく輪になって酒を飲む「ファイヤーカーニバル」という大学公認の飲み会が開催されていた。全ての酒、食事代は学校が出してくれる夢のようなイベントなので毎年参加者が多かった。初体験が出会い系で知り合った車椅子の女というような大学生活を送っていた僕はそういう趣向のイベントは敬遠していたのだが、日頃お世話になっていたゼミの先輩に誘われ、仕方なく一回だけ参加した。
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ジョージ高野似の先輩は「燃え盛る炎を見ているとさ、自然と心が熱くなってお酒がいつもより美味しくなるんだ」と言った。火を見るとそういう気持ちになる人が多いのは理解できるが、中学校の時の臨海学校のキャンプファイヤーにて急遽開催されたのど自慢大会でトップバッターに指名され、何を歌ったらいいのか分からない手探りの状況でWANDSの「時の扉」を熱唱し「キャンプに合った曲を歌いなさい」とみんなの前で怒られた苦い記憶がどうしても蘇ってしまい、僕の心は閉ざされていた。会話が続かないことに困った先輩は「お互いの初体験の話をしよう」と酒の場にお決まりのH話を放り込んできた。一刻も早くこの男を黙らせたいと思った僕は、車椅子の女性との初体験を赤裸々に話した。教育実習に行った学校で生徒達から20回も胴上げされるような人間がデキた先輩はしばらく黙った後に「飲めば忘れれるさ」と酒を勧めてきた。「どんなに飲んでも車椅子は車椅子なのだから忘れることはできない」と言い返したいのを我慢してただ大量に酒をあおり記憶を失った。次に目を覚ました時は警察だった。先輩と警察の話では、泥酔した僕は演劇部の部室に行き、無理やりウエディングドレスを借り、バス停にドレスを着せバス停と熱いキスを交わす結婚式を挙げ、「バス亭とセックスする」とテコの原理でバス亭を倒そうとしていたところを警察に保護されたそうだ。被害者は無理やり既婚にされたバス亭のみであるし、特に破損した場所も無かったので厳重注意で解放された。どうせなら初夜まで経験したかった。
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翌日、その件について大学の就職指導課から呼び出しがあった。就職指導課の面々とは、学長室の真向かいにあるトイレの個室からトイレットペーパーを引っ張り、学長室の扉まで届くのかどうかという実験をした時に、学長室まで届いたトイレットペーパーを笑顔で巻き取りながら帰っていた所を捕まえられた件で面識があった。「就職のことでしか生徒を怒ることが無い私達がこんなことで生徒を怒るなんて…」と絶句させて以来の再会となった。「以前のトイレットペーパーの件といい、こんなことばかりしていたら就職できないぞ」という内容のお説教だった。散々叱られた後に「たぶん大丈夫です」とシンプルに答えてその場を後にした。もうこいつらと会うこともないだろうと思っていたのだが、内定をもらった帽子専門店の入社前日に「いくら帽子専門店といっても、6階建ての自社ビルを持ち、その全フロアで帽子だけしか売っていないのは気が狂っている。怖い」と思い、入社を断ったことでもう一度会う羽目になるのだから人生は面白いなと思う。

僕は真剣に痩せようと思う。


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# by tsume_kirio | 2014-05-22 09:14 | 人生の終わり | Comments(14)