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金色夜叉   

ここ最近の仕事帰りは職場から自宅まで歩いて帰っている。その所要時間は約一時間程度。特に中番終わりの深夜に歩いて帰ると、冬の肌寒さが身に染みて心地良い。歩きながら将来のこと、金のこと、異性のこと、いろいろなことを考える。もっぱら最悪なことばかり考える。前向きなことは何一つ考えない。それが異様に心地良い。歩いていると喉が渇くので、途中にある自動販売機で色々なジュースを買うのが一つの楽しみになる。同じ会社の自動販売機でも場所によって微妙に値段が違う。値段の違いが起きている原因を地理的な問題や設置しているお店の業種的な問題から分析するととても楽しい。嘘だ。楽しいわけないだろう。そんなことで楽しんでる人は一生インターネットでそういう分析をなさっておけばいいじゃないですか。


飲み物を二つ買い、コートの右ポケットに冷たい飲み物、左ポケットに温かい飲み物を入れて、飲み物を握り締めて帰る。徐々に右手が氷のように冷たく、左手が炎のように熱くなる。ダイの大冒険のフレイザードになった気分になり顔がニヤけてくる。深夜の道をニヤニヤして歩いているとよく職務質問をされる。中野の警察はちゃんと仕事をしているので安心だ。職質をされている時、氷の右手で警官の手を握り「僕は氷を操れる能力者なんです」と言った後に、灼熱の左手で「実は…炎も操れます」と控えめに手を握る。「実は…」じゃない。無事に家に着いてからは、灼熱の左手と氷の右手を交互に使って自慰をする。右手の冷たさがチンコに伝わる度に、雪女とセックスをしたくて冷蔵庫でキンキンに冷やしたオナホールを作ったり、積もった雪を固めて雪のオナホールを作っていた過去を思い出して泣けてくる。嘘だ。俺はよほどのことがなければ泣かない。泣く時はほとんどベローチェで泣いているが。
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そんな怠惰な日々を過ごしていたからか分からないが、職場に面倒な客が来た。ヤンキーの彼氏にメンヘラ風の金髪女のカップル。女が携帯電話を無くしてしまったので探してくれとのこと。男の頼み方が全部タメ口で、俺がカウンター業務で他のお客様に対応している横から「早く監視カメラとか巻き戻せよ!ハゲ!使えねえな!」とか言ってくる始末。現場をくまなく探した後に、カメラを巻き戻してチェックしても怪しい所は何もない。「もう一度お荷物の中を確認してくれませんか?」と言ったら「俺たちを疑ってんのかよ!殺すぞ!もっとちゃんと探せ!」と言われた。仕方なく床に這いつくばってゲーム機の下をもう一度探す。



しかし、このヤンキー男は繁華街によく居るタイプだから我慢できるとしても、自分の不注意で携帯を無くしておきながら、ただオロオロしてるだけで、激昂する男を諌めることすらしないこの女は何なんだろうか。紅夜叉みたいな顔しやがって。恥をしれ、夜叉。最近は病院に通院しているので医者との関わりが多い。俺の周りには医者とか夜叉とか「しゃ」の付く奴しか集まらない。医者、医者、医者、夜叉。医者、夜叉、医者、夜叉。医者、医者、夜叉、夜叉、医者の毎日であるよ。こういう夜叉のような女に限って、音楽を聴く時に「歌詞がすごく良いの!」とか言いそうだ。俺は音楽を聴く時に歌詞なんてどうでもいいんだよ。でもあいつは良かったな。スガシカオ。彼の「夜明け前」の「今、夜のヤミにむけ うちはなつ ぼくらの銃声は みえないそのカベを 一瞬で 突き破ろうとして 街にただ ひびいただけ」という歌詞はすばらしかったな。親父に焼却炉の中に閉じ込められて、暗闇の中でこれが人生最後のオナニーと決めてここうとしたら、どんなに考えても堀ちえみのことしか浮かんでこなくて、人生最後のオナニーを特に好きでもない堀ちえみで抜くしかなかった俺の空しさを見事に表した歌詞であると評価する。「ヒットチャートをかけぬけろ」の歌詞はどうかしてるけどな。
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そんなことを思いつつ、床を這いつくばりながら女の方をちらりと見たら、ワニ叩きゲームのハンマーをいじっていた。なんだそりゃ。そのハンマーはお前の剣か。剣といえば、お前のような奴が意外と幕末好きで新撰組大好きって感じの女だったりするんだろうな。偏見が思いっきり入るが、そういう女のほとんどは、幕末の志士や新撰組でマンズリしたいだけだろうが。お前の好きな沖田や土方のようには目立たない志士も居たんだよ。今の俺みたいに床を這いつくばってたんだよ。それを分かった上で沖田と土方でマンズリをしろ。そういえば板橋にある新選組の慰霊碑か何かにフラリと寄った時に記帳ノートが置いてあって、訪問者が思い思いの気持ち悪い言葉を書いていたんだが、そのノートの隅に二人の棒人間が刀の斬り合いをしているパラパラ漫画を描いてる奴が居た。どういうつもりだ。せめてどっちが新撰組なのかだけでも書け。少しモヤモヤしたぞ。私はあのパラパラ漫画に遺憾の意を表明します。
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ふと太鼓叩きゲームの奥の方に大きめの物体が見えた。形からいって携帯では無かったが一応懐中電灯で奥を照らす。そこに浮かび上がったのはきれいな桃だった。こんな所に桃?洒落た小型爆弾かもしれないが、自分は爆死にちょっとした憧れがあるのでかまわず桃を手繰り寄せた。中を確認したところ、桃の入れ物に入ったミツバチ毒のハンドクリームだった。桃の中にミツバチの毒が入っているなんて本当に洒落ているじゃないか。桃といえば天皇陛下のほっぺたも桃のようなほっぺただ。ここにもし陛下が居たなら「陛下、こんな所に桃がありました」と報告したい。きっと陛下は「これは本当に良い桃ですね。本当に良いですね」と二回言ってくれるだろう。そして俺は「失礼を承知で言いますが、まるで陛下のほっぺたのような桃です」と言いたい。割と本気で言いたいぞ。そんな妄想をしていたら「何かあったのかよ!」と怒りが頂点に達している男に声をかけられた。俺も三十五年間生きてきたので、すごく怒っている人に桃を見せちゃいけないことぐらいは分かっていたのだが、こういうことは言いたくて仕方ない性分なもので「すいません、携帯じゃなくて…桃ならありましたよ」と桃を見せつけた。一瞬の沈黙の後に「ちゃんと探してくださいよ」と男は言った。桃にはタメ口を敬語にする力があるらしい。「では桃は元の場所に戻しておきますね」と桃を太鼓叩きゲームの下にそっと戻した。なぜ元の場所に戻したのかは分からない。
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音楽家や作家でも何でもいいけど、他人に憧れて生きるだけの人生よりも桃の素晴らしさに憧れて生きる人生の方が楽しいんじゃないかと思う。


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by tsume_kirio | 2015-01-21 15:48 | 人生の終わり | Comments(5)

ダライアス通勤生活   

不安障害が悪化した。昔から長距離の電車移動は得意では無かったが、4~5駅の短距離移動も苦手になってしまった。電車が止まったらどうしようという不安に襲われただけでめまいや息切れが起きる。鞄を右手に持ったり左手に持ったりという奇行を繰り返してしまう有様だ。ボボ・ブラジルのロゴ入りバッグをせわしなく持ち直している中年男の姿はさぞ滑稽であろう。まぁ最悪の場合は専用の薬を飲めば症状は治まるのでそこまで深刻ではないのだけど。
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いつまでもこんな状態なのも困るので、極力薬に頼らずに症状と戦うことにした。自分でどうすることもできない恐怖を克服する為には、愛する物から力を借りるしかない。僕にとってそれはプロレスと自慰しか無い。思い返せば3・11の東日本大震災の時も、震災後の先行き不透明な不安と目に見えない放射能の恐怖に打ち勝つ為、一人で自宅のトイレに篭り、初代タイガーマスクの覆面をかぶって自慰をすることで自分を奮い立たせたものだった。同じように不安に襲われている同棲中の彼女をほったらかし、虎になって自慰をした結果フラれた。フラれた理由は虎になって自慰をしたからだ。
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これまで東京から実家の香川に帰省する時は、新幹線での長距離移動に耐える為、常に虎の覆面を携帯していた。品川から新幹線に乗り込むと、だいたい名古屋辺りで精神に限界が訪れる。僕はおもむろに席を立ち、トイレ内で虎になり自慰をする。東から西へと移動しながら自慰をする。ヒガシカラニシヘジイヲスル。自慰の最中ふと思う。時速200キロを超える速度の中で自慰をしている今この瞬間、この新幹線に雷でも落ちたら、何かの化学反応で僕は本当の虎になってしまうんじゃないか?そんなことを思うと勇気が沸いてくるのだ。
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そんなこんなで今回も虎の力を借りることにしたのだが、通勤に使う電車にはトイレが付いていない。なので少し早めに起きて自慰をすることにしたのだが、自慰をする為に早起きをするのは終わりの始まりのような気がしたのでやめた。それならば最寄り駅のトイレで虎になろうとしたが、最寄り駅には個室トイレが一つしかない為、先客が居た場合は虎になれずに乗車しないといけない。それを避けるためにはやはり少し早起きして駅に行かないといけない。だからどうして自慰の為に早起きしないといけないのだ。さすがに産んでくれた親にちょっとだけ悪い。


そこで考えたのが、自分が乗った電車内で自分好みの女性を見つけることだった。電車に何かあった時に、この娘にだけは情けない姿を見せたくないし、君だけは守ってみせるぞと思えるだけの女性と一緒の車両なら恐怖に打ち勝てる。しかし、そう簡単に毎日素敵な女性とめぐりあうわけもない。そういう時は自分の頭の中で、ババアを若返らせたり、幼児を大人に成長させ何とか自分のマドンナを見つけるようにした。恐怖が薄らぐと余裕が出てくるもので、停車駅から乗り込んでくる女性達を厳しく審査するようになり、目的地に着くまでにベストオブマドンナを決めるようになった。ただ審査をするのにも飽きてきた僕は、押しボタンをポケットの中に忍ばせ、駄目な女性が乗ってきた瞬間にボタンを押しその女性を爆破する妄想をして楽しむようになった。そのうちどんな女性が乗ってきても爆破するだけのただの爆破魔に成り下がった。



やはり女性を爆破するのにもそのうち飽きてきて、男女問わず電車に乗ってくる人をシューティングゲームの敵だとみなし、雑魚キャラ、中ボス、大ボスに分類して撃墜するようになった。雑魚は1回、中ボスは20回、大ボスは50回ボタンを押さないと撃墜できないという設定で駅と駅の間をゲーム感覚で楽しんだ。注意深く他人を観察し始めて気づいたことだが、いかにも雑魚キャラというミジンコのような人も居れば、ダライアスの中ボスのような魚人間も居るし、風神、雷神のような大ボスの風格を漂わせた人も居る。みんながそれぞれの人生を抱えてこの電車に乗っているんだ。みんなみんな生きているんだなと思うと胸が熱くなった。胸は熱くなったが全員逃さず撃墜した。
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このように色々と試行錯誤をした末に僕がたどり着いた結論は、ちゃんと薬を飲んでから乗るか、黒人と一緒の車両に乗るかの二択だ。デカい黒人が近くに居てくれるだけで、どんなトラブルが起きても大丈夫だろうと思える。とにかく安心感が半端ではない。僕は電車に乗る度、黒人を捜し求め先頭車両からケツの車両まで歩く。黒人を見つけられない時は大人しく薬を飲むだけだ。他人から見れば辛い人生に思えるかもしれないが「今日は黒人居るかな…?黒人居てくれよ!」と思いながら駅に向かう足取りは軽いし、黒人を見つけられなかったら薬を飲むという面白い条件付きで薬を飲むのは普通に薬を飲むより楽しい。僕は幸せだ。
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by tsume_kirio | 2015-01-10 15:26 | 人生の終わり | Comments(7)