カテゴリ:仕事( 2 )

その辺の問題

「どうして俺は働いているんだ」と自問自答しながらも、なんだかんだで今日も働いている。ただ、いつでも辞める覚悟だけはできているので、カバンの中には常に辞表を忍ばせてある。日付の欄だけ空白にしてあるので、いざ提出となった時は提出日だけ記入すれば30秒で完成する優れ物である。退職理由については、素直に「もう飽きた」と書きたい所だが、一応社会人らしい理由にする為「体力の限界、気力も無くなり、退職することとなりました」と、天下の大横綱である千代の富士の引退理由を使わせて頂いている。
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今の職場で働いていて辛いことと言えば、夏場に外から侵入してくるセミへの対処である。虫が大嫌いな私にとっては悪魔の襲来であるので、バイトとのミーティング時は「セミが出た場合はあなた達を見捨てます」と、昨今の政治家にも見習って欲しい明確さで自分の意志を打ち出している。セミが出た場合は、先ほどの宣言通り事務所内に閉じこもり、ドアの下から三千円をスッと差し出し「あとはよろしくね」という大人の対応を取る。さっきまで「助けてくださいよ!ひどいですよ!」とドアをノックしていたバイトが「頑張ります!」と力強い声でセミに立ち向かっていく。私はバイトとセミの戦いを監視カメラで見守りながら、安全な事務所内のパソコンでソリティアを遊ぶ。これが社会人だ。俺はここまでのし上がったのだ。
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セミの襲来より嫌なのが、会社から年に一回の受診を義務付けられている健康診断である。病院に行くこと自体は嫌いというより好きな性質なのだが、どうにもこうにも採血検査が苦手なのである。私が軽い先端恐怖症というのもあるが、少しの時間でも注射針という異物が自分の体内に入っている感覚が、とにかく気持ち悪い。単純な痛みではなく精神的な理由なので始末におえない。
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今年の採血検査も大変だった。まずは担当の看護婦さんの名札をチェックしたら「藤田」と苗字しか書いていなかったので、すぐに下の名前の「由美子」を聞き出す。自分の血を抜く人間の名は下の名前まで知っておきたい。戦国時代、自分の首を切られる前に、相手の名前を聞いてから心置きなく首を切られた戦国武将と同じ心意気である。そして問診へ。「藤田さんは僕で今日何人目の採血なのか」「単純に採血は得意なのか」「看護婦何年目か」「今日の藤田さんのバイオリズムはいかがですか」と矢継ぎ早に質問を投げかけ、藤田さんという人のことを少しでも知って信頼関係を築く。その上で「いざ!」と気合を入れてから採血へ。「セミのあの尖った口で採血されないで・・・ちゃんと注射針で採血してもらえるだけ・・・僕は幸せ者ですよね」と言っているうちに無事に採血は終わった。映画「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」で、主人公の少年が満天の星空を眺めながら「人工衛星に乗せられて死んだライカ犬より、僕のほうがまだ幸せだ」と言う場面があるのだが、あの時の少年の気持ちが私にはよく分かる。私には何でも分かる。
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何とか採血に強くなれないか色々と考えてみた。自分だけ血を抜かれるという不公平さが嫌なので、私の血を抜く看護婦も、私と同時に血を抜かれるというシステムを取ってくれないものか。そうだ、もう一人看護婦を呼んでもらおう。いや、せっかくもう一人看護婦が来るのなら、その看護婦に私の手を採血中ずっと握っていてもらいたい。いや、男は手を握ってもらうぐらいで勇気なんぞ出ない。最悪フェラチオ、出来るなら挿入させては頂けないものか。私が体内に注射針を入れられるのと同じタイミングで、私もチンコを口か女性器の中に挿入できれば、立場的にイーブンな状態なので心の平静を保てそうだ。掛け声は「いっせーの!」で。だが、看護婦は天使では無いのでそんなことはしてくれないだろう。そうなるとこっそりと採血中にオナホールを装着するしかない。その場合はせめてものエチケットとしてオナホールに病院の十字マークを貼っておくことにしよう。
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勤務中にこんなことばかり考えてるうちに、そんなこんなで今の職場で働き出してから三年目の夏が終わった。私がセミ退治を強要したおかげでバイトが辞めたわけではなく、単純な人手不足でほとんどの時間を職場で過ごした夏だった。仕事以外では家で筋トレを始めた。リラックスした環境で筋トレを行う為に、筋トレ中は部屋でお香を焚いていた。私はスクワットが嫌いなので、何とか楽しくスクワットをできないかと考えた結果、全裸になり、床に置いたお香焚きの上でスクワットをすることで、筋肉を鍛えると同時に陰部に当たるお香の煙で、己のチンコとアナルを良い匂いにするという一石二鳥のオリジナルスクワットを開発した。
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アナル周辺から良い匂いがすることは自分への自信につながる。自信が付いたら誰かに自慢したくなる。良い匂いのチンコとアナルを自慢できる相手は風俗嬢しかいない。私は風俗街に繰り出した。いつものように「ガーネット・クロウのボーカルによく似た女の子居ませんか?」とリクエストしたがあえなく撃沈。岩崎ひろみによく似た風俗嬢に事情を説明すると、話の分かる女の子で「嗅ぐ!嗅ぐ!」と彼女は私の陰部にボスッと顔をうずめた。そして「すごく良い匂いだよ!」とはしゃいでくれた。「この匂いすごく好き!私も買おうかな・・・なんて名前のお香?」と聞かれたので「・・・・・・ヒマラヤ」と答えた。私に続いて彼女も「ヒマラヤ・・・・・・」と言った。風俗のプレイ中に「ヒマラヤ」という単語が2回出たのは史上初ではないか。ひとしきり匂いを楽しんだ後、私のチンコを口でくわえこんだ彼女は、素晴らしい舌技で私を攻めた後に「良い匂いがしてもしなくてもチンコはチンコだね!」と言った。すごく深い言葉だ。この夏一番の素敵な言葉頂きました。
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そんな2015年の夏だった。ここ最近、私が自殺するんじゃないかと心配してくれる人が多いのだが、プロレスラーは死んじゃいけないのでプロレスファンも死んじゃいけないのだ。だから私は死なない。


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by tsume_kirio | 2015-09-11 08:54 | 仕事 | Comments(3)

鯉の季節

精神的に問題があったのかどうかは分からないが、親父がよく買っていた任侠物の漫画で、ヤクザが責任を取って指を詰めるシーンのコマだけをスクラップにして保存している時期があった。なぜそんな時期があったのかは分からない。これから先の人生でもし私の指が無くなるようなことがあったら、オメガマンの背中の手の指みたいに顔付きの指にしてやろうと思う。

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指を無くすといえば、地元の友人の父親は工場の事故で右腕を無くしてしまった人だった。片腕でも庭師としての仕事を器用にこなし、自分が片腕だということを自虐的なネタにして笑いを取るような明るい人だったので地域の人からの人気も高かった。もちろんわざと明るく振舞っていた部分もあるのだろうけど、基本的に楽しいおじさんだった。腕が無いことでだらんと垂れ下がっているシャツの右長袖を扇風機にはためかせ「鯉のぼり~!」と言う一発ギャグを越えるギャグに出会うことはこれから先の人生もきっと無いだろう。

親父さんは明るいだけじゃなくてとても大きな人だった。友達の家に遊びに来ている僕が何か悪いことをすると、ちゃんと殴って怒ってくれた。親父さんは片腕なので、殴る時に思いっきり身体を捻って反動をつけるので、左腕を振りかぶった勢いで、腕が無い方の右長袖が流されてきて、まず僕のほっぺたにペチッと当たってから左ビンタが来るという二段階式ビンタを食らうのが面白くて仕方なかったので、親父さんが長袖を来ている時を狙ってわざと怒らせてはビンタをもらった。なので自動的に冬によく悪さをしていた。

友達とキン肉マンの消しゴム、通称キン消しで遊んでいた時に、家で嫌なことがあってムシャクシャしていた僕は、全てのキン消しの右腕をハサミで切り落として「お前の親父みたいにしてやったぜ~!」と最低のことをした。それを見た友達は特に怒らずに「片腕もかっこいいや~ん!」と言ってくれた。なんて良い息子だ。大人になってから親父さんと友達と三人で飲んだ時に、いきなり片腕キン消しのことを親父さんがしゃべり出した。実は親父さんもその光景を見ていたけど「子供のすることやから…」と思って特に何も言わなかったそうなのだ。親子揃って懐の深い男達にきちんと謝罪し、そして感謝をした。その時に自分の初体験は車椅子の女性だったことを告白したら「人形の恨みやな」とそれはどうなんだというコメントを親父さんはしてくれた。
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歳を重ねても親父さんは常に笑いを提供してくれた。一緒に回転寿司を食べに行った時に、食事をし始めてから五分ぐらいして「不利だ」とつぶやいた時は寿司の味がしなかった。「この前富士山を見に行った時の写真や」と見せてくれた写真で、腕が無くてだらんと垂れ下がっている親父さんの右腕の部分と隣に立っている奥さんとの間にできた隙間に富士山が見えているという構図に舌を巻いた。

そんな親父さんも最近は自分が死ぬ時のことを常に考えているそうだ。葬式で出棺する時に棺を乱暴に扱われたら、寄り弁のように腕の無い方に自分の体が寄ってしまうんじゃないかと心配しているので「じゃあ腕が無い方に発砲スチロールでも詰めたらどうですか?」と提案したら「それは見映えが悪い」と言うので「発泡スチロールが見えないぐらいに綺麗な花を入れますよ」と返したら「そうしたら腕の無いこと気にして花で隠してるんかなとか思われるやん」とブラックマヨネーズの漫才みたいになったので話を止めた。そんな親父さんのおかげで指を無くすことを怖がらずに僕は働けている。ありがとう。
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by tsume_kirio | 2013-06-02 22:31 | 仕事 | Comments(2)