2015年 02月 13日 ( 1 )

マフールへの道

うちの親父はもう長くないかもしれない。


親父はTHE BOOMの宮沢和史を特に理由も無く長年忌み嫌っていたのだが、先日の電話中、最近解散したTHE BOOMに関して「終わり良ければ全て良し」という好意的なコメントを寄せていた。二十年以上バンドを続けてきた結果、讃岐の前科者に「終わり良ければ…」と言われる宮沢の気持ちたるやいかばかりか。長年の敵に温情を見せ始めただけでなく、自分の自撮り写真を俺に送りつけてくる奇行も始まった。親父の自撮り写真は、どの写真も昔のファミコンゲームの「カルノフ」にしか見えないので非常に困る。かたやカルノフの息子である俺は、渋谷のヤマダ電機で「最近暴れている外国人窃盗団のモンゴル人ボスに似ている」と職務質問をされたことがある。なんともいえない強い血の繋がりを感じる。
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あとは囲碁を始めることを親父に勧められた。「うちの家系の男は代々囲碁をたしなんでるのに、お前だけしない。囲碁を覚えてくれ。いつか親子で一局打てたら嬉しい」とのこと。非常に気持ち悪い。「俺は彼女が欲しいので囲碁をしている暇など無い」と答えたら「息子にこんなことを言いたくないが、お前はもう彼女はできないと思う。いいから囲碁をしろ」と断言された。俺は囲碁を始めることにした。囲碁の教本を読みながら、飽きが来たら自慰をする毎日だ。受験勉強中にここまで解いたら自慰をしようと、問題集に自慰の目安としての付箋をたくさん貼って頑張っていた日々を思い出す。
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以上のようなことから、親父が人生の終焉期に差し掛かっているのを感じた。じゃあ己はどうなんだということで、自分の人生を振り返ってみると、とにもかくにもクソみたいな思い出しか無いが、人生の絶頂期と呼べる時期は渋谷でグレーな仕事をしていた時だろう。内容を書けない程のグレーな仕事だったので給料はとにかく高かった。アルバイトの分際で手取り45万の月給をもらっていた。給料が高い仕事はとかく精神を病む。心は病んでいるが金は持っているという状況なのでパチンコにはまった。大勝ちした時はそのまま風俗に行くのがお決まりのコース。ひどい時は夜勤上がり→パチンコで大勝ち→風俗→風俗帰りにパチンコで大勝ち→また風俗→同じ娘を指名→ラブホテルから出勤という散々な一日を過ごしたこともあった。


そのうち、単に風俗に行くのもつまらなくなり、手土産を買ってから行くようになった。LUSHで大量にバスボム(入浴剤)を買い漁り、風俗嬢だけを風呂に入らせ、浴槽の中にバスボムを投げ込みながら「どうだ!どうだ!どうだ!」と叫びながら泣いた日もあった。バスボムでいっぱいになった浴槽の中から、歯茎が腫れ上がった風俗嬢が「泣かないで」と言ってくれた。
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ある時は、ジーンズメイトで背中一面に風神柄が入った柄シャツ、同じように雷神柄の入った柄シャツをそれぞれ購入してから風俗へ。プレイが終わって服を着る時に「雷神と風神のシャツを買ったんだけど、どっちが似合う?」と聞いた。「こっち!」と風神を選んでくれる東北弁訛りの風俗嬢。「風神か、ありがとう。良かったら着させてくれる?」とわがままを言う。シャツの袖を通してもらってる時に「俺は風神か」と思いながら心で泣いていた。女に風神か雷神かの2択をさせるなんて人生の絶頂期でしかできないことだろう。
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そんな時に行ったソープランドで、お客への配慮として、退店時に周囲から見ても恥かしくない場所に出られる出口が用意されていた。出口に続く長い昇り階段の下で「ご来店まことにありがとうございました。この先の扉を開けると日常の世界が目の前に広がります。退屈な日常に飽きましたら、またここに足をお運びください」とボーイに送り出された。背中にソープ嬢の甲高い声を受けながら後ろを振り返らずに階段を昇る。重い鉄の扉を開けた目の前はロッテリアだった。そうだ。ロッテリアこそ日常だ。俺の日常だ。風神の柄シャツを着た男はロッテリアのふるポテをシャカシャカ振りながら「このままではいけない…」と泣いた。
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あのロッテリアで人生をやり直そうと決めたんだった。あの時の気持ちを取り戻さなければ。今すぐ宝石屋に転職しなければ。宝石を買いに来たのに、予定を変更して真珠を買おうとするようなわけの分からない客の相手がしたい。宝石の棚卸しをして「ルビーが2個足りません」と店長に報告をしたい。宝石屋で働き出したら宝石屋で働く男のブログを始めて「宝石屋 初日」というタイトルの記事を書きたい。新井薬師にオープンしたガールズバーに行かなければいけない。もっとプロレスを見に行かないといけない。囲碁はもう終わりだ。
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それにしても、くるりの曲は風俗のプレイ中や、風俗帰りに良く合う。ソープランドの長い階段を昇っている時に頭の中で流れる「東京」。中央線沿いのピンサロの早朝サービスで北勝海のような力士顔のババアを引いた帰りに、晴天の青空を見上げながらの「シャツを洗えば」。どれだけ手と口で頑張っても俺を勃起させることができなくて申し訳なさそうにしている風俗嬢の頭を優しく撫でながら「三日月」。風俗から帰宅したら、何も知らない彼女が、俺の為に作ってくれていた豚の生姜焼きを食べている時に頭を流れる「さよならリグレット」。全て最高だ。最高だけど岸田は嫌いだ。岸田に優しくなった時に俺は死ぬのだろう。


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by tsume_kirio | 2015-02-13 14:25 | 人生の終わり | Comments(6)