奥田民生似の女との昼食   

休日に一緒にご飯を食べる奥田民生似の女の友人が居る。彼女は大学時代の友人で、最初に出会った大学2年生の時の彼女は「ケダモノの嵐」を出したぐらいのユニコーン時代の民生によく似ている。最近の彼女は「月を超えろ」のジャケットの民生によく似ていた。「ケダモノの嵐」の時の民生から結婚と2回の出産を経て、前科を1個経て「月を超えろ」の時の民生になった。介護士である彼女は老人ホームでの勤務中に罪を犯した。しつこく罪の内容を聞いたら「エロジジイに熱湯」とだけ彼女は答えた。
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彼女とは趣味や性格も合ったので、大学を卒業してから会った時にイイ感じになったことがある。キスをするために目を閉じた彼女の顔はキスをする時の奥田民生の顔だった。その顔を見て爆笑してしまってキスできなかった。「ひどい!」と珍しく傷ついている彼女を慰めるために「俺は奥田民生が本当に好きだから奥田民生に似た顔の女と付き合えない。これから先、君を悲しませて泣かせるかもしれない。それは奥田民生を泣かせているようで嫌なんだ。同じ理由で武藤敬司にそっくりの女とも俺は付き合えない。君が奥田民生じゃなくて草野マサムネに似ていたら付き合えたのに…」とムチャクチャな言い訳をして早速彼女を泣かせた。「どうせ前科者になるのならあの時お前に何かすればよかった」と彼女はよく言っている。僕がこの思い出について言えるのは「今にして思うと草野マサムネ似の女は面倒臭そうで嫌だな…」ということぐらいである。
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彼女と飯の時に話す話題は他愛の無いことが多い。たとえば、彼女から「本当にどうでもいい話をしてくれ」とリクエストがあれば「力道山は本妻である田中敬子さんにプロポーズをした時に、奥さんがOKをしてくれた嬉しさで思わず泣いてしまい、泣き顔を見られるのが恥ずかしくてその場から逃げ出した。心配して追いかけて来た奥さんを抱きしめてキスをしたのが二人のファーストキスだ」という話をして「本当にどうでもいい」と言われて嬉しそうに僕は笑うような感じだ。
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民生似の彼女に「東日本大震災の時はどうしてた?」と聞かれたことがある。2011年3月11日。あの日は当時同棲していた恋人に早めのホワイトデーのお返しをしていた。人一倍生クリームが好きだった恋人の為に、イチゴなどの余計なデコレーション無し、生クリームしか使っていないケーキをオーダーメイドした。ケーキを受け取って家に帰る途中に個人経営の肉屋が有ったので「今日は気分を変えてこういうお店の唐揚げでも食おうか!」と鶏の唐揚げを大量に買い込んだ。全てが輝いていた。家に着いてケーキに唐揚げに飲み物を食い散らかしていた時に震災が起きた。


今起きていることへの実感が無いまま目に見えない恐怖に怯えていた。でも恋人を勇気付ける為に表面上は平静を装っていた。しかし福島原発から黒い煙が立ち上がる映像を見た時に気持ちが折れた。子供の時に読んでいた原子力の本やチェルノブイリのレポート漫画などで「黒い煙はやばい」というのを知っていたからだ。「日本は終わった」と思った。


目を閉じて深く深く深呼吸をした後、私はおもむろにトイレへと向かった。手には初代タイガーマスクの覆面、左手には小野真弓の写真集。お前はいったい何をしているんだという恋人の視線を無視して私はトイレに篭った。直面しているこの絶望的状況から立ち上がるのには、プロレスとオナニーの力を借りるしかなかった。もう一度深く深呼吸をして「タイガー、力を貸してください」とつぶやいてマスクをかぶった。私は虎になった。震災直後の日本に虎になった男が居たことはあまり知られていない事実だろう。ただ、その虎は小野真弓の写真集でオナニーをしていた。日本の未来、地震、放射能、家族、恋人、仕事、夢、なぜ俺は虎のマスクをかぶってオナニーをしているのかという疑問、様々な感情がごちゃ混ぜになり、私は自然に泣いていた。虎は泣きながら果てた。オナニー後の万能感が私を包み込み恐怖心がすっかり消えた。私は虎の覆面を脱ぎ捨て、すっくと立ち上がった。布団を抱きしめて震えている恋人の肩を強く抱き締めながら「もう大丈夫だよ」と笑った。


という話を民生似の彼女にした。彼女は笑いながら「60点」と言った。


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by tsume_kirio | 2013-09-06 23:05 | 震災 | Comments(2)

Commented by すけべドリル at 2013-09-06 23:22 x
メチャクチャ面白かったです!
Commented by しまりす at 2014-06-13 09:36 x
奥田民生さんの女性版って渡辺真知子さんにも似てませんか?

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