焼却炉 その3   

怒られる心配はないとは思いつつもちょっとは緊張して帰宅した。家族の様子は普段と何の変わりも無かった。夕食を一緒に食べている時に「学校から電話あったわ…もうあのお店行ったらあかんぞ…」と親父が注意してきたのに「分かった…」と短い返事をして耳のおばちゃんの件は終わった。しかしその後の「校長先生に感謝しいや…」という親父の言葉で一気に頭に血が上った。僕の中学の校長は僕の親戚の叔父さんだった。子供の頃からそんなに仲良くもなかったのに、中学校に入った僕のことを常に気にかけてくれていた。意味も無く校長室に呼び出されて「頑張れよ」と言われたこともあった。頼んでも無いのにそこまでしてくれた理由はいまだに分からない。

ある時、担任の先生のもとに「千葉君が本屋で万引きしてました。盗ってる所をこの目で見ました」というチクリがあった。目撃者は一学年上の不良グループの先輩。先輩は小学校の時からなぜか僕を目の敵にしていて、その時も無い話をでっちあげて僕を困らせようとしたのだ。担任と僕と先輩の三人で職員室の奥の小さな部屋で事実確認をしたが、実際に万引きなどしていなかったので簡単に先輩の虚言だと分かった。後々面倒くさくなるのは嫌なので笑顔で先輩を許して終わりにした。ところがその三日後に、泣き顔の先輩とお母さんが手土産にビニール袋いっぱいのたくさんのネクターのピーチジュースを持って家に謝罪に来た。そして「今回は本当にすみませんでした」と揃って床に頭をつけた土下座をした。その時に校長が裏で何かしたんだろうなと分かった。事実確認は取れなかったけども。

万引きの件のようなことはその後も何回かあった。頼んでも無いのに守られてる安心感。学校の最高実力者が味方。若干皇族に近い身分。最初こそ若干良い気持ちだったが徐々に気持ち悪くなった。中学校になってニキビがひどくなってきた僕。化け物の顔をした僕を可愛そうに思った校長に守られているような被害妄想で頭がいっぱいになった。校長のことが本当に嫌いだった。そんな奴にまた助けられたことへの嫌悪感と、その後に、過去にもう百回ぐらい聞かされた「アマレスがいかに素晴らしいか」という話を親父がまた始めたこと、常に抱えていた母親が居ない寂しさ、家の借金問題、いろいろな気持ちが合わさって僕を限界を迎えた。

僕は無言で席を立ち、裏庭に保管してあったエアガン2丁を取り出して応接間に向かった。そして棚に飾られているたくさんの優勝トロフィーの中から祖父の囲碁大会の物を安全な場所に避難させ、残された親父のアマレストロフィーに向かって至近距離から銃を乱射した。ボロボロになっていく親父の栄光。トロフィーの頂上に付いていたアマレスコスチューム姿の金色の人形が何体かはじけ飛ぶ。音を聞きつけて応接間に来た親父に対して「同じ話何回すんだよ。アマレスハゲ。このアマハゲ野郎」と罵った。その時に親父は初めて僕に鉄拳制裁をした。いつものようにタックルが来ると思って重心を落として構えていた僕の無防備な顔面にクリーンヒットした親父の全力のグーパンチで僕は意識を失った。次に意識を取り戻した時に僕は真っ暗な焼却炉の中に居た。

僕の話によく出てくるエアガンはサンタさんにもらったものだ。クリスマスに、枕元に置いたプレゼントを入れるための靴下の中に「銃が欲しい。2つ欲しい」とサンタさんへのリクエストの手紙を入れておいたら、翌年のクリスマスにエアガンを2つ手に入れた。小学生の息子からの「銃が欲しい」という手紙を読んだサンタ役の親父は自分の子供の行く末を本当に心配したそうである。親父は映画の「シティ・オブ・ゴッド」で銃を持ってギャング化する子供達を観て小さい時の僕を思い出したそうだ。偶然にも、親父をエアガンで撃ってたことを思い出しながら僕も同じ映画を観た。同じ映画を観た親子が、同じ思い出を共有したなんてすごく素敵なことではないだろうか。

余談として、前回に書いたような親父への陰湿な嫌がらせに加えてエアガン乱射などをしていたので、中学2年生の時に、精神科に行くようにと家族に勧められた。気が進まなかったので「診察を受けたらスーファミのソフトを1個買ってもらえる」という条件で病院へ。診察結果は「漫画と映画の…見過ぎですかね…」というものだった。田舎の精神科医は最高だ。病院帰りの車の中で、結果に納得のいかない顔をしていた親父に買ってもらったのが「樹帝戦記」。定価で9000円ぐらいした。あまりに高額だったのでどんなゲームなのか確かめようと思った親父が見守る中でこのゲームをした。全然面白くなかったのだけども、買ってもらった手前楽しそうにプレイして親父に気をつかっていたことを覚えている。
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by tsume_kirio | 2013-03-19 19:51 | 焼却炉 | Comments(10)

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